ゴッホの『古靴』を思い浮かべていただきたい。若い彼が神学校や伝道学校就学を諦め、炭鉱労働者や病人の世話など慈善活動に挺身し、さらに画家を目指してパリへ赴いた頃履いていた靴だと言われる。その靴を「自画像」的に描いた作品。その実在感と写実性。……馬船に馬と人と下肥など載せた図を描けるか?渡賃はいくら?近くの耕作渡船場の手形は?その取り締まり方は?村人は関所逃れの旅人を賃渡していなかったか?夜中の通行は?幕末、天狗党関係の人や荷物・武器の往来とその査検は?何故庶民女性の関所通行も厳重だったの?……わたしたちはトリビアルな物や事、庶人の生活を追求します。分析・総合的手法を駆使する手前で、「永遠の初心者」(フッサール)の目でかつての現場(史資料)をためつ眇めつします。史資料の解釈を駆使した過去の現場に対する「批評」の手前で、まず息づく「共感」を梃子にした現場の歴的的再現がありはしないか(かつてあったのではないか)。古文書はその入口……
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