2017年7月4日火曜日

〔第20回 関所に鉄炮六挺を備える〕

栗橋関所御備の鉄炮六挺が送られてくる。先ずは「先触」が宿継ぎされて関所に届けられた。その後、宰領とともに荷物も到着した。その際の文書の遣り取り等、じっくり読んでほしい。


〔翻刻文〕

六月七日
一当支配福田所左衛門殿御役所ゟ当御関所御備御鉄炮差立方宿継之先触到来左之通り
       福田所左衛門手附   渡辺幸之助
       同人    手代   小菅十一郎
 先触    同人    手附   松沢 俊助     
                  山口市郎次

      覚
 一小長持   壱棹
   外莚包二ッ添
  此人足三人
      福田所左衛門内
         横田弥兵衛
房川渡中田御関所口備鉄炮入長持壱棹、才料相添今六日昼九ツ時江戸差立右御関所迄差送候条、宿々おゐて書面之人足差出、支配所外御定賃銭請取之無遲滞可被継立候、先触早々継送栗橋宿至右御関所可被差出候、以上
               福田所左衛門手附
 子六月六日             山口市郎次
                   松沢俊助
                   小菅十一郎
                     不詰合無印  
                   渡辺幸之助
       日光道中
        千住宿ゟ
        栗橋宿迄
         右宿々
           役人中

〔訳文〕

六月七日
一房川渡中田御関所支配の福田所左衛門殿の御役所より、当御関所御備の鉄炮の発送につき、宿継ぎの先触が到来した。左の通りです。

       福田所左衛門手附   渡辺幸之助
       同人    手代   小菅十一郎
 先触    同人    手附   松沢 俊助     
                  山口市郎次


 一小長持   一棹
   外莚包二つ添
  この人足三人
    福田所左衛門内
         横田弥兵衛
右は房川渡中田御関所口備の鉄炮が入っている長持一棹であります、宰領を附き添わせて今日正午江戸を出発、房川渡中田御関所まで送ります。(途中の)宿においては書面の人足を差出し、支配所外では規定の賃銭を請け取り、遅滞なく継立てていただきたい。先触は、早々に栗橋宿まで継送り、御関所へ差し出していただきたい。以上
 福田所左衛門手附
 子六月六日    山口市郎次
          松沢俊助
          小菅十一郎
             その場におらず印なし  
          渡辺幸之助
       日光道中
        千住宿ゟ
        栗橋宿迄
         右宿々
           役人中
  

〔翻刻文〕

一右先触着問屋場ゟ差出、則横田弥兵衛御鉄炮附添着早々差出御用状左之通り
 御鉄炮差立便啓上いたし候、然其御関所御備鉄炮御渡相成候付、
右御鉄炮六挺并附属之小道具・玉薬共別紙引渡目録之通才料差立申候、着之上御改御請取追請取目録御遣可被成候
一 右引渡目録之内玉薬箱之儀今便間合兼候間追差立可申、其段引請目録下ヶ札致置候間右御承知可被成候
一御鉄炮御預証文別紙案文之通御認、追便差越可被成候
右之段可得御意如斯御座候、以上
  六月六日            山口市郎次
                  松沢俊助
                  小菅十一郎
                  渡辺幸之助
        嶋田耕平殿
        加藤摝兵殿
        冨田潤三殿
        足立柔兵衛殿
 入記
一御関所御備鉄炮其外引渡目録   壱通
一竿鉛・合薬・管差立目録     壱通
一御鉄炮預り証文案        壱冊

〔訳文〕

一先触が問屋場に到着し、問屋場より御関所に差し出されました。すぐに、御鉄炮付添の横田弥兵衛も到着なされ、差し出された御用状は左の通り。 
 御鉄炮発送の御手紙いたします。さて、そちらの御関所に御備の鉄炮を御渡しする件について、御鉄炮六挺ならびに附属の小道具・玉薬を別紙引渡目録の通り、宰領を添えて発送致しました。着きましたらお改めの上お受取りいただき、近いうちに請取目録をこちらに送って下さい。
一引渡目録のうち、玉薬箱は、今便に間に合いませんので、近いうちに必ず発送致します。そのことは引請目録に下ヶ札しておきましたので、御承知なさって下さい。
一御鉄炮預証文は、別紙案文の通り書いていただき、追便で送ってください。
以上の事御承知なさって下さい。
六月六日            山口市郎次
                  松沢俊助
                  小菅十一郎
                  渡辺幸之助
        嶋田耕平殿
        加藤摝兵殿
        冨田潤三殿
        足立柔兵衛殿
 入記
一御関所御備鉄炮其外引渡目録   一通
一竿鉛・合薬・管差立目録     一通
一御鉄炮預り証文案        一冊

〔翻刻文〕

一別紙差立目録左之通り
 御関所御備鉄炮其外引渡目録
一ケヘル筒    六挺
一胴乱負革共   六ッ
一𠝏袋・管入真鍮セヽリ御鎖付   六組
一三ツ股玉取共          六ツ
一万力              弐挺
一鋳形錫共            壱組
一右御筒入長持          壱棹
  但御紋付油単共
一両掛玉薬箱           壱荷
  但御紋付雨覆共
一御筒懸             壱居
       (下ヶ札)
          「本文玉箱之儀今便間合兼
           候間跡ゟ差立可申候」
一*替かもん           六ツ

*替かもん:火門、火口のこと
   〆
右之通引渡申候、以上
  子六月            山口市郎次印
                 松沢俊助 同
                 小菅十一郎出役無印
                 渡辺幸之助同
        嶋田耕平殿
        加藤摝兵殿
        冨田潤三殿
        足立柔兵衛殿
  〆
   竿鉛・合薬・管差立目録
一竿鉛五貫四拾目  但鋳減之分見込玉数六百玉分
一合焔硝壱貫八百目  
 内 壱貫弐百目  但御備合薬六百発分
     六百目  但筒払合薬当六月ゟ十二月迄拾度分
一管九百九拾粒
    内  六百六拾粒  但御備管不発之分見込六百発分
       三百三拾粒  但筒払不発之分見込当六月ゟ十二月迄拾度分              
右之通差立申候、以上
  子六月             山口市郎次印
                  松澤俊助 同
                  小菅十一郎 不詰合無印
                  渡辺幸之助同
        嶋田耕平殿
        加藤摝兵殿
        冨田潤三殿
        足立柔兵衛殿
  〆
一御鉄炮預証文当方ゟ差出置候分案書被遣候得共爰文略ス、追差出本文
 扣相記し候事

右之通横田弥兵衛附添御鉄炮長持壱棹并附属御道具共持参付、同役立会之上改受取右弥兵衛へ仮請取差遣
一御鉄炮    長持壱棹
  其外附属御道具共
一御用状    壱封
右之通無相違請取申候、追御役所御請書差出可申候、以上
  子六月七日      当方四人印
       福田所左衛門殿御内
            横田弥兵衛殿

  〆